2016年10月8日土曜日

ながらえて

山田太一の笠智衆を主人公にした老いのドラマに、「ながらえて」と「冬構え」がある。
最期の生を自分らしくまっとうする至難の業がテーマだ。

今日のスーパーでは、幾組かの夫婦の姿を垣間見て、いろいろと思う。
まずは、ある団塊の世代か、はたまた、まだ高齢者予備軍かの夫婦の買い物姿。
奥さんが猪突猛進で、旦那が後をカートを押しながらついていく。
女房殿は、いじったパックを散らかしたまま、次へと向かう。
旦那は直しもせず、しずしずと追うのみだ。
パッパラパーで荒くたい大変な配偶者殿によくかしずいておられることよ。

次のご夫婦は、仲良い平等夫婦っぽい歩み方だ。
ダンナが「買い物かごは?」と聞く。
奥さんは「それが忘れちゃったのよ」と微笑む。
旦那さんが淡々とカゴをとりにいく。
あっけらかんの妻とフットワークのよい夫。
微笑ましいカップルだ。

帰って、テレフォン人生相談を聴く。
相談者は70歳台なかばの未亡人だ。
最近三つほど年上のご主人をなくしたそうで空虚さをうったえる。
素封家の旦那が残した600坪の家にひとりで住むと寂しい。
子供もいるが、他所で生活しており、未亡人は独居である。
回答者の弁護士は、資産運用などを勧めるが乗らない。
信託制度や成年後見制度もあれば、資産の運用は弁護士のいうとおりだろうが、相談者のうったえるのは、心の寂しさだ。
聴いていると、ボランティアや習い事も精勤にやっており、心身に困ったところも未だなく、要は愚痴の類である。
スーパーで垣間見た夫婦だけでなく、夫婦や独居に関係なく、最後は徹底的な孤独のもとで去っていくのが生き物の定めである。

やんんちゃなわんこらに、朋輩の命儚さを説教すると、首をかしげながらもおとなしくなる。
ながらえた後の〆がなかなかむつかしい高齢社会である。

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