2016年9月10日土曜日

嘘の効用

人間に限らず、生き物は嘘をつく。
擬態で獲物を引き付けて、異性を惹きつけて、よりうまくサバイブする道を選ぶ。
人間もその例に漏れないが、だから嘘つきで問題なしともならない。

わが人生ここまで経験してきたことを踏まえていうと、医療では、医療者も患者家族も、結構平然と嘘をつく。
法律実務でもそうだ。
極言すれば、みんな嘘のつきあい騙し合いと云っていいかもしれない。

それでも、ヘーゲルの云うとおり、存在するものはそれなりに合理的ではある。
明治の著名な法学者は次のように嘘の効用を論じている。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000922/files/45642_28592.html
末弘厳太郎「嘘の効用」

凡人の私も、自分の嘘、他人様の嘘でずいぶん苦労してきた。
なんとか首の皮一枚で、妄想を振りまくフーリガン元クライアントの魔手から逃れたこともある。
いまや医師や弁護士が、ペイシャント、クライアントから刺殺されたりする時代である。
まだ、ましな方である。

最近、野党の党首選で、候補者の二重国籍問題が話題になっている。
この方へのご意見は人さまざまだ。

多重国籍は世界のトレンドだから問題なしと擁護する向きもあれば、国会議員として欠格だと指弾する人々もいる。
批判する人々の多くも、単に二重国籍自体を非難するするわけでなく、もっぱら当事者の説明の変遷やご都合主義を国会議員に値しないと論じるものがほとんどだ。

保守系野党も、多重国籍者を国会議員の欠格事由とする法案を提出予定と聞くが、確かに国の枢要な業務にあたる特別公務員が、他国の第五列に並んだり、間接侵略と評される行為に及んでも何の抑制も効かないとなれば、どこの国でもそういうことを許すわけはなく、やはり政治家のアカウンタビリティという点から、黒白をつけないと、きっと嘘の効用どころか、嘘の致命傷に沈没することは必定というべきであろう。

馬齢を重ねてくれば、嘘も脛の傷も無数にあれば、バージンライクに私は嘘は言ったことありませんなんて嘘を重ねる必要はないものの、嘘の扱いで、馬齢を重ねてきただけで、鹿齢と併せては重ねてはいませんよと示す必要はありそうだ。

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