2016年11月10日木曜日

業界噺

あるSNSで、ネット知己のDrが、医師増員があらまほしを書き込んでいた。

過重労働や医療過疎その他さまざまを理由に、増員論も賑やかに論じられることしばしばである。

今日は、その問題点について触れてみる。

わがもう一つマージナルマンとして関わる世界、法曹界とりわけ弁護士界隈が参考になる。
ロースクールができて、員数が急増した。
しかし、合格できず滞留する学生も多く、合格実績の悪いロースクールは淘汰され廃校となり、運よくか悪くか新規参入できた新人たちも、ロースクールや司法研修所でのローンや負担を負って青息吐息の実務生活に入る。
パイが大して増えるわけでもないところに過当競争が生まれ、ベテラン層にも不採算で倒れる人々も多くなる。
横領、詐偽などで縄付きになる弁護士があとをたたない。
いまや、弁護士の信用喪失の深化の進む哀しい状況が露わになってきている

これは弁護士の話で、医師はそうならないだろうとおっしゃる向きもあろう。
しかし、この財政の厳しい時代に、弁護士と同じく一定のパイを分け合わねば計算があわないのは、数学ほどでもない、簡単な算数の話である。
これは、医療界でも、コメディカルのたとえば看護師諸氏に起こっている。
需要よりも多くの資格者は生まれているが、とてもこれじゃ乗れない、ほかのことをやるという忌避者がたくさん居る。

医者は、養成期間もより長く、医育機関の負担やコストも大きければ、養成される予備軍医学生の負担も大きい。
アメリカでのメディカルスクールで背負うローンを返す姿は、日本のロースクール出の新人弁護士によく似るといわれる。
洋の東西を問わず、こういうトレンドは、容易な増員を許さない現実となっている。

原資を欠いた業界では、ベテラン医もロートル弁護士同様没落や逃散を余儀なくされるだろう。
ワークシェアリングや教育のノーブレゥオブリージの言葉はきれいだが、給料が半減して貴兄は可能か?

このようにペシミズムを生む土壌は厳しい。
もちろん、中国の歴史三千年ではないが、西洋でも大昔から他人様の人生お世話業の二大プロフェッションとして脈々と続いてきた業であるから、潰えきるということはないだろう。
ただし、このネットだけでなく慌ただしい時代、ひと昔のような名望家的存在では居られないことだけは明らかである。

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