2015年9月1日火曜日

裏の裏

自分も肉を喉に詰めて九死に一生を得たので、きっと苦しく亡くなったろうと思う私小説作家の車谷長吉さん。
彼は本格的に作家活動をする前に、左翼系の出版社に勤めておられた。
左翼系といいながら右翼のフィクサーから金が出ていたという。
この手の怪しいおっかない人士がなぜそういうものを持とうとするかというと、それを使って総会屋の如く政治家や企業に睨みを効かせることができる。
左の業界というとおかしいが、いろいろとスキャンダルネタその他を集める情報収集マシーンとしても使える。
車谷さんの小説にも、そういう生態が書き込まれていて面白く読んだ。

SNSで紹介した某プランナーのBloggerが、今回の国会前デモについて、戦後左翼根問いをするなかで、プロ市民に中国から資金が出ているなんていうのは陰謀論だと書いていたが浅い。
車谷さんの勤めていた新左翼風の出版社に右翼の金が出ていたなんてよくあることだ。
運動資金なんて露骨にマンツーマンで渡すより、バックに流すのが通常だ。
今回のデモに限らず、車両や旗の使い回しでどこのご一統さんかよくわかる。
そのバックに組合費だけでなく、カンパやなんやと別の工作組織から金が回る。
菅直人が首相だったころ、国会答弁で口を濁しながら逃げ回った政治資金もその手の色がギンギンについていた。

こういうのは政治だけではない。
医療などでも、このところ医者は弱い。
裁量や職人的自由は減りながら、なべて管理職扱いゆえ、看護師のように組合的庇護にも乏しい。
god handならずとも立ち去り型のストライキで若干のresistanceは可能だが、芸者置屋のよう前借り金で縛って員数揃えしようという流れもあり、過労死する前に足抜けできるかどうか心もとない。
医者が足りぬ量産せよとアジテートしている病院元管理職もいるが、若い医者は量産となると僕らの奴隷度が上がるねとリアリズムでみている。
いまでもその気配ありのところで、ロースクール創設でこけかけの弁護士界の二の舞は必定。
使い捨て、ディスポ扱いの業界に喜んで次世代は飛び込むまい。

医療事故についても、activeは医者のサンクチャリー、immunityを求めるが、リスク管理が他領域でも厳しく論じられる時代に認められる可能性は高いとは言い難い。
車についても厳しくが流れとなってきている。
原発は、航空機は、その他緩くした方がいいというジャンルが見えない。

医師法に異状死体届出義務の規定があるが、これもプロ医師弁護士らが医療事故で外表に徴憑がなければいいのだと一判例に依拠していいつのるが、それは一般診療のミニマムでは外表チェックが要求されるだけで、個別具体的に診療情報を踏まえて診たときにどこまで要求されるかは、そう安直なものではないと思われる。
そもそも、患者側の冠付きのミュンヒハウゼン症候群や医療者のそれ風や虐待、後妻業の悪行など、医療現場とlinkして素朴な医療事故とはいえない、故意の事件も少なからず発生する時代では、医療事故とそもそも性質決定が容易でないところで、議論に無理や破綻が生じかねない。
アメリカなんぞはと出羽の守を持ち出しても、マイケル・ジャクソン事件のように、未必の故意や重過失が疑われれば、しっかり立件される。ピアレビューもきつく、下手をすると業界purgeとなる。
日本でも、それはそうとはいかんでしょうという事件が発生すれば、医師法の異状死体届出義務など飛び越え、虚偽診断書作成罪、証拠隠滅、公文書偽造、他人の犯罪の共犯その他使える法条がてんこ盛りに待っている。
その前に下手を打つと病院が潰れるので(行政処分レベルで十分に)、管理者と現場の医師に利益相反の側面も厳然とある。

といった風に、裏の裏をまた裏返せばいろいろと出てくる。
だから、素直に表と裏をすがめて、自分の及ぶ範囲で考え得心して因果応報を享受するほかない。
そういう表も裏もあまりない結論に到達。


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